社会課題

農業の活性化に挑戦するスマート農業ビジネス12選

スマートアグリ

日本の農業はポテンシャルがあるといわれながらも、高齢化や労働力不足から生じる耕作放棄地の問題や、長年培われてきた高品質の農作物を作る知恵や技術が継承されないといった問題が山積しています。

その一方で、農業法人による大規模化や、ICTを用いた生産の高度化から、流通・加工・消費まで一貫してデータでつなぐ「スマートフードチェーン」プロジェクトなど、持続可能な農への取り組みも活発化していますので、そのような新しい農業ビジネスを紹介します。

耕作放棄地の現状とその原因

5年ごとに農林業に関するさまざま調査をおこない、統計を出している「農林業センサス」というものがあります。
これによると「以前耕作していた土地で、過去1年以上作物を作付け(栽培)せず、この数年の間に再び作付け(栽培)する意思のない土地」を耕作放棄地としています

日本の耕地面積は長期的に減少傾向が続いており、2018年には467万haとなりました。耕作放棄が非農業用途への転用を上回って推移していることが、耕地面積が減少する大きな要因となっています。
2017年の耕作放棄地面積は2012年より4万3千ha(13%)増加して38万6千haとなりました。増加率は近年鈍化しているものの、耕作放棄地面積は琵琶湖の面積の5.7倍、耕地面積の8%にまで達しています。

耕作放棄地は、日本のどの地域においても増え続けているのが現状です。その理由は主に2つあります。

1つ目は農業をおこなう人が減っているということです。
天候に左右されて収入が安定しないことや重労働のわりには生産性や収入が低いなどの理由から、若者が農業に就くことが少なくなっているのです。

平成31年の農業就業人口は168.1万人となっており、平成22年(260.6万人)からの9年間で35%強の減少となっています。また、平均年齢は66.8歳に達しており高齢化も進んでいます(農林水産省「農業労働力に関する統計」)。

2つ目は農業をしないにも関わらず農地が放出されないことです。

農家にとって農地は貴重な財産です。従って、高齢になって農業をしていなくても農地を譲るというのは覚悟がいることなので自ら積極的に農地を売るということは考えられません。

農地を相続した子孫も、自分が農業はしなくても、敢えて急いで売るというインセンティブはないため、放置されてしまうという状況になります。また、その農地が比較的市街地にある場合には農地の転用(宅地などとして利用できるようにすること)が認められるため、将来、自分の農地も転用ができるようになって、もしかしたら土地の値段が上がるかもしれないと考え、手放さずに放置しておく人もいます。

耕作放棄地が起こすさまざまな問題

耕作放棄地といえども、個人が所有する土地となります。元来、農業をするもしないも土地の所有者である人の自由です。

しかし、耕作放棄地となってしまうと自身の土地に問題が起きるだけではなく、周りの土地にも迷惑をかけることがあるのです。
ここからは、耕作放棄地が起こすさまざまな問題について紹介していきます。

農地の状態が悪化する

農地は農地転用という手続きをしない限り、農業としてしか使えません。農地の土は作物が育つための栄養分が含まれた良質な土といわれています。

しかし、放っておかれた農地は時間が経つにつれて、土の質が悪化していきます。
耕作放棄地になってしまうと田畑全体の状態も悪くなり、再度農地として使用することが難しくなってしまうのです。農地として使うためには土の質を維持するための管理が必要となります。

雑草や害虫、鳥やイノシシなどの被害

農地は放置すると次第に雑草が生えてきたり害虫が増えてきたりします。

害虫が大量に発生すると周囲に農家がある場合は迷惑がかかりますし、農地でなくても家の中に入ってきたりして迷惑となるのです。
また、特に中山間部の耕作放棄地では鳥獣による被害も多くなっています。カラスなどの鳥類に加えて、イノシシやタヌキなどが農地を荒らします。耕作放棄地はこうした動物たちの隠れ場や住処となってしまい、活動範囲を広げてしまうのです。

鳥獣の被害がひどい場所では、餌を求めて集落や民家に侵入するというケースもありますので気をつけなければなりません。

ゴミの不法投棄問題

耕作放棄地になると雑草などが多く生えて、その土地に何があるがわからなくなります。

人の目に付きにくくなると、そこにゴミを不法投棄する人が出てきます。
1人がゴミを不法投棄すると「ここにゴミを捨てても大丈夫なんだ」という心理が働き、どんどん不法投棄する人が増えてくるのです。

不法投棄問題は景観を損なうだけではなく、例えば、家電やプラスチックゴミなどの場合は自然界にも悪影響を与えるものとなります。

農業の活性化に挑戦するスマート農業ビジネス12選

農業の活性化に取り組むソーシャルビジネスの事例を紹介します。

アグリウィズ

アグリウィズのサイト画像▼運営サイト: アグリウィズ

2019年7月1日、渡辺パイプ株式会社が2019年7月に開始した、会員同士が互いに助け合えるマッチングサービスです。会員は相互に「農機具貸し借り」「農機具売買」「農作物売買」「販促物制作」「農作業請負」ができます。

農作物の売買や農機具の貸借、売買時には顔の見えない相手に対する与信などが心配ですが、本人意確認されたユーザーを選べるため、安心して取引できます。また、アグリウィズが仲介することでトラブルの防止につながります。
また、農作業請負サービスでは賠償責任保険や傷害保険が付帯しており、万が一の事故にも保険金が支払われる仕組みとなっており、利用者の安心を考慮したサービス内容となっています。

株式会社アグリメディア

アグリメディアのサイト画像▼運営サイト: アグリメディア

遊休農地・遊休地を活用して、首都圏や関西圏の都会で週末農業を楽しめる貸し農園・体験農園(シェア畑)を、全国に99ヶ所、区画は日本最大の10,829区画を運営しています(2020年5月同社HPに掲載)。
同社が運営する『シェア畑』サービスでは、利用者は栽培に必要な物は全て揃っているため手ぶらで通え、アドバイザーのサポートを受けながら無農薬野菜を栽培することができるようになっています。

同社ではそうした農業体験事業のほかにも農業に関する様々な事業を展開しています。

  • キャリア事業:
    農業に特化した求人広告や人材紹介事業や、座学と実践で体系的に学べる農業学校運営など
  • 農地活用事業:
     農地・遊休地の活用や維持管理サービスなど
  • 流通事業:
     道の駅・農産物直売所運営や飲食店向け農産物流通事業など
  • コンサルティング・共同事業:
     自治体向け農業振興施設の支援や法人向け新規事業の事業化支援など

株式会社シェアグリ

シェアグリのサイト▼運営サイト: シェアグリ

2019年4月から、農業・介護・建設など14分野で「特定技能」による新しい形での外国人材の受け入れ(派遣事業)が可能になったことを受けて、特定技能の外国人材を直接雇用して農家に派遣する事業を行っています。

農業分野では作業量に季節変動があるという課題に対し、繁忙期の異なる産地間をリレー形式で繋いでいくことによって、「必要な時期に、必要な人員を、必要なだけ」派遣することを実現しています。これは、農家にとって良いだけでなく、外国人材にとっても賃金の安定化と複数作物の技術習得というメリットがあるため、Win=Winのビジネスモデルとなっています。

2020年には新型コロナウィルスの影響で外国人材の来日が困難となっているため、国内の飲食業や宿泊業といった、休業や失業で仕事がない業界の人材と人手が不足している農業分野の人材マッチングを行う取り組みも行っています。

プランティオ株式会社

プランティオのホームページ画像 ▼運営サイト: PLANTIO

誰でもどこでもアグリカルチャーを楽しむためのサービス群として、人と農のコミュニティ&プラットフォーム『grow』シリーズを展開しています。
growシリーズでは、「都心のオフィスビルや商業施設の屋上でのシェア型コミュニティファームの運営」「野菜の育成状況などをAIで管理をするIoTプランターやアプリ」など、野菜を楽しく育てるためのさまざまなコンテンツやアプリケーションで構成されます。

  • grow SHARE
    野菜を育てる人と野菜を欲しい人をつなぐWebサイト
  • grow FIELD
    都市の遊休空間を活用したシェア型のIoTコミュニティファーム
  • grow JOURNAL
    ”共給共足”の世界を目指す「食」と「農」のWebマガジン
  • grow GO
    みんなで楽しく野菜を育てる世界を実現するためのプラットフォーム『grow』の専用アプリ。
  • grow CONNECT
    IoTを使ったオフグリッド栽培を可能にするハードウェア

YACYBER株式会社

YACYBERサイト画像▼運営サイト: YACYBER

「YACYBER」という、直売所・農園を見つけられるスマートフォン向けのWEBサービスを運営しています。
スマートフォンでYACYBERを開いて、ボタンをタップするだけで、位置情報を使って現在位置から10km以内の野菜の直売所を見つけることができます。
直売所以外にも、味覚狩りや農業体験が出来る農園まで、ご家族やお友達みんなで楽しめるスポットも多数掲載されています。

MY FARM(株式会社マイファーム)

MY FARMのサイト ▼運営サイト: MY FARM

増え続ける耕作放棄地の活用による農業再生、食料自給率の向上を目指して2007年に創業しました。自分で野菜を作って収穫し、自分で食べるという「自産自消」を掲げています。畑をはじめたい人への貸し農園サービスから始まった同社も、現在では多岐にわたる農分野での事業を展開しています。

【BtoC領域】

  • 体験農園マイファーム(畑をはじめたい人への貸し農園)
  • アグリイノベーション大学校(週末開講の社会人向け農業スクール)
  • 会員制通販(こだわりの食材通販)
  • 飲食店(農にこだわったレストラン)
  • 畑と人を結ぶマッチングサービス

【BtoB領域】

  • オンラインBtoB卸売市場アプリ
  • 企業向け農体験プロデュース
  • 企業向け参入支援・事業化サポート(農業体験・研修)
  • 農地の窓口(農地情報検索サービス)

The CAMPus

The CAMPus▼運営サイト: The CAMPus

暮らしも生業も高次元にバランスした農分野のプロが教授となって、暮らしと商売に関する哲学やノウハウを有料のWEBマガジンとして配信しているインターネット農学校。
そのほかにも、”農”を軸とした地域活性化プロデュースや定期宅配サービスの運営なども行なっています。

株式会社クロスエイジ

クロスエイジのサイト ▼運営サイト: クロスエイジ

「農業の産業化」を経営理念として、流通・商品・生産者の3つの角度でスター農家を生み出す農業総合プロデュース事業を展開しています。

【農業総合プロデュース事業】

  1. 流通プロデュース:青果の中規模流通を販路開拓で創造
  2. 商品プロデュース:マーケティングデータに基づき市場にマッチしたスペシャル農産物を創出
  3. 生産者プロデュース:収量アップ、コスト低減から補助金活用、6次産業化まで規模とニーズに合わせて農業経営全般を支援

株式会社坂ノ途中

坂の途中のサイト ▼運営サイト: 坂ノ途中

環境負荷の小さな農業に取り組む人たちを増やす、100年先もつづく農業のかたちをつくる、そして持続可能な社会にたどり着くということを目指しています。
現在の主力事業は、環境負荷の低減を目指す農家の作物の卸売や通信販売で農家の販売面を支援しています。
つながっている農家さんは200軒、そのうちの9割を新規就農者が占めています。新規就農した人たちが環境を損なうことの少ない農業をはじめやすい、つづけやすいしくみ、それを作ることが、新しく農業を営む人たちを増やし、農業を未来につづくものとする最短ルートと考えていることがその理由となっています。

NPO法人えがおつなげて

えがおつなげてのサイト▼運営サイト: えがおつなげて

耕作放棄地を、都会の若者や企業の社員を中心とした農業ボランティアの手を借りて開墾することからスタートした「えがおァーム」運営。その田畑で採れた作物や、加工した商品をインターネットで販売する「えがおマルシェ」事業。
企業のニーズと農村の資源を結びつけることを目的とした「企業ファーム事業」では、三菱地所グループと組んで耕作放棄された棚田を再生し、採れた米を原料にした純米酒を作ったり、グループ社員やその家族を対象にしたツーリズムを実施するなどのプロジェクトを実現。ほかにも味の素冷凍食品や、金精軒や早稲田大学ビジネススクール等ともプロジェクトを実施するなど成果をあげています。
他にも人材育成・教育事業や農商工連携事業、自然エネルギー事業など様々な事業を行っています。

JUM(全国中古農機市場)

JUMのサイト画像▼運営サイト: UMM(全国中古農機市場)

中古農機具の流通市場に新たにインターネットを介した取引方法を提供することで、中古農機具売買を活性化させることを目指しています。
農機具店を中心に累計業者会員数698社と農家会員数4,574名を有する国内最大級の特化型マーケットプレイスで、2007年のサービス開始以来、累計18,000件以上の取扱い実績があります。

日本きくらげ株式会社

日本きくらげ▼運営サイト: 日本きくらげ

同社監修の下作られた、大きさが7㎝以上、厚みが3mm以上の規格のきくらげを「日本きくらげ」として商標登録を行い、栽培ノウハウ・IoT技術・クラウド技術を融合させた栽培パッケージの展開を行っています。
栽培パートナー(フランチャイジー)として事業会社2社と提携して国内10箇所で栽培が行われており、通年の生産可能量は100tを超え、販路はスーパーなどを含めると、約1,200店舗を超えています。

終わりに|農業の活性化に挑戦するスマート農業ビジネス

日本の農業は高品質である一方で、法制度の問題などから大規模化や法人の事業参入が進まなかったため、生産性が低い状況が続いてきました。しかし、近年では、耕作放棄地の増加や後継者不足の問題への対策として、法人の参入や農地の集約に向けた動きが少しづつ進展しています。

新型コロナウィルスの世界的な流行や、アフリカを中心としたバッタの大量発生、アメリカと中国との新冷戦など、世界の食料安全保障が揺らいでいるいま、農業を産業として早急に育成する必要があります。

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