10年後、君に仕事はあるのか?

現在の高校生世代が、これから迎える不確かな時代にどんなチカラを身につけていけばいいかについて書かれています。

著者は、リクルート出身で、2003年に都内で義務教育初の民間校長として杉並区和田中学校の校長に就任したことで話題となった藤原和博氏(その後、大阪府の橋下知事の特別顧問などを経て現在は奈良市立一条高等学校校長)。

2020年は時代の変わり目

藤原氏は、以下の三重の衝撃の影響で2020年を境に労働市場には地殻変動が起こり、若者に厳しい現実が押し寄せると指摘している。

・AI×ロボット革命が進むにつれて事務系の処理仕事がなくなっていくので、事務系の求人は半減する
・2020年に開催される東京五輪後は、アテネ五輪や北京五輪の例をみればわかるように、閉幕後は景気が落ち込むことが予想される
・労働動態的に高齢者の比率が高まり、現役世代である若者の負担が高まる。消費税は15%程度にはなると予想される

その中で、こうした変化に強い職種として、アジアの中間層の台頭によって外国人旅行者の数が増えることから「観光」、その数が不足することから「プログラミング」の2つを挙げている。



仕事が消滅する時代に身につけたいチカラ

普通の人がこれからの時代に必要な生きるチカラを、「基礎的人間力」「情報処理力」「情報編集力」の三角形で説明している。
これからの正解がない時代には、「情報編集力」の重要度が高まると述べ、その要素を5つのリテラシー(コミュニケーション、ロジカルシンキング、シミュレーション、ロールプレイ、プレゼンテーション)に分類している。そして、これらを学ぶ機会は、正解のない問題への対処が求められる「遊び」の中にあると指摘している。

また、仕事ができる人の共通点として「遊び」の感覚を持っていることとに加えて「戦略性」があることを挙げている。「戦略性」については”狙った獲物を外さないという感覚”である。目標やビジョンを実現するのに十分に計画的な振る舞いができているか、多様な資源の上手な編集(つながりや組み合わせ)がなされているかどうかだと表現している。

一生が90年時代のライフデザイン

「人生が90年の時代には、1回の人生ではとても生ききれない」と結論づけている。
そして、20〜30代、40代〜50代、60代以降と3回の人生を順繰りに生きて、仕事を重層的に積み重ねていく「八ヶ岳型連峰主義」を提示している。いまの仕事をやっているうちに同時に次の山をつくるための準備が欠かせなくなる。そこで大切なのは複数のコミュニティに参加することで、やがて育つビジネスやボランティアの芽を育んでいって欲しいと助言している。

こうした重層的なキャリア形成において、自分の価値を高めるための鍵として「希少性」を挙げている。そして、そのためには、キャリアを掛け算することで、100万人分の1人になることを目指すことを提案している。
つまり、3つのキャリアを経験するとして、ある分野で1万時間取り組めば誰でもその仕事をマスターして100人で1人の存在になり、次の分野で同様に100人に1人の存在になればその時点で1万人に1人の存在になる、といった具合に掛け算を通じて希少な存在になっていくという戦略的な考え方である。

編集後記

「LIFE SHIFT(リンダ・ラットン著)〜100年時代の人生戦略〜」に通じるものが多い内容だったが、高校生を読者対象に据えていることもあって、身近で分かりやすい表現で書かれていたことが良かった。

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皆さんはご自身の寿命を何歳と考えていますか?「あなたの寿命は100歳です。」と言われたらまず何を思い浮かべますか? - ...

本書の中で重要な力として強調されている「情報編集力」が高まれば、世の中の諸機能を「つなげる力」が上昇し、社会がもっと柔らかく結びつくようになって幸福感も高まると指摘しているが、私自身も「ハイブリッド(つなげる力・組み合わせる力)」の重要性を改めて認識させてもらえた。この「つなげる力」は、21世紀のビジネスにデザイン思考が必要な理由」で「他の人の専門性と繋ぐ”横棒”を持って他の人とつながってHになる」という発想にも通じるものがあると感じた。

21世紀のビジネスにデザイン思考が必要な理由
21世紀のビジネスにデザイン思考が必要な理由
当サイト名でも使われている「ハイブリッド」というキーワードが使われているため興味を持って読んでみました。

また、キャリアを掛け合わせて希少性(付加価値)を高めていくという戦略的な考え方をとても分かりやすく説明されていることに感服させられた。