副業・兼業を容認する企業が2割 【リクルートキャリア調査】

リクルートキャリアが2000社を対象に行った「兼業・副業に対する企業の意識調査」によると、正社員の「兼業・副業を推進している」という回答は22.9%という結果になった。

副業・兼業「禁止派」vs「容認派」それぞれの理由

アンケート結果では、それぞれの理由トップ3は以下のようになっている。

<副業禁止派>
1位: 社員の長時間労働・過剰労働の抑制 55.7%
2位: その他 33.3%
3位: 情報漏洩のリスク 24.4%

<副業容認派>
1位: 特に禁止する理由がない 68.7%
2位: 従業員の収入増につながる 26.7%
3位: その他 5.3%



副業に対する企業の本音は?

全体のうち、「副業を就業規則で禁止している」という積極的な副業禁止派の割合が48.0%と半数近くに達しており、副業に対する否定的な姿勢は明白になっている。
禁止の理由としては、副業禁止派は「社員の長時間労働を心配してます」といった姿勢をとっているが、社会的に長時間労働が問題となっていることからも、『既に長時間働いているのだから(これ以上働いたら過剰労働になる)』という”見えない”前置きが含まれている可能性は大いにある。加えて、本業への集中の低下に対する懸念や、労働災害が起こった時の保障のあり方など不透明な点が多いため、できれば面倒は避けたいというのが本音ではないかと思う。
副業容認派の理由も「特に禁止する理由がない」という消極的な賛成に留まっており、総じて「できれば関わりたくない」という本音が透けて見える。

日本の企業と個人との労働契約は、企業と従業員との関係を”共同体とそのメンバーの関係”のようにとらえ、長期継続的な関係が続くことを基本としてきた(詳しくは「同一労働同一賃金の衝撃」を参照)。

同一労働同一賃金の衝撃
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同じような仕事をしていれば同等の賃金を支払うという「同一労働同一賃金」。政府の「働き方改革」においても目玉政策として掲げ...

個人は、長期的な雇用の安定を得ることを引き換えに企業に所属する(従属するという方がしっくりしているかもしれない)という考え方が続いてきたために、就業規則での副業禁止が明文化されていたと考えることもできる。

一方で、調査を実施したリクルートキャリアを含むリクルートグループ各社や、ヤフー、サイボウズなどを始めとした先進企業群では、副業を認めることは数ある働き方改革の一つにすぎず、積極的に多様な働き方への対応を進めることによって生産性を向上させるとともに、イノベーションを創出することを目的としているため、当調査対象企業群との差は歴然である(「副業禁止はもう古い!正社員の副業okの企業まとめ」を見る)。

副業禁止はもう古い!正社員の副業OKの企業まとめ
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政府も副業の「原則容認」を明確に打ち出す時代になってきましたが、ITや人材関連の、柔軟で活力がある企業を中心に「副業」を...

政府も今後は副業・兼業を認めていく

政府は、企業が参考にする厚生労働省の「モデル就業規則」を改定し、副業・兼業の「原則容認」を明確に打ち出していくようだ。 複数の企業に勤める場合の社会保険料や残業代などの指針もつくる。働く人の収入を増やし、新たな技能の習得も促す。安倍晋三首相は副業や兼業について「普及は極めて重要だ」という認識を示している。なお、「働き方改革」において首相が示したテーマは以下の9つとなっており、”副業”に関しては5つめの”柔軟な働き方”という項目で示されている。

(1) 同一労働同一賃金など非正規の待遇改善
(2) 賃上げと労働生産性の向上
(3) 長時間労働の是正
(4) 転職・再就職支援。格差を固定させない教育
(5) テレワーク、兼業・副業など柔軟な働き方
(6) 働き方に中立な社会保険制度、税制。女性・若者の活躍
(7) 高齢者の就業促進
(8) 病気の治療、子育て・介護と仕事の両立
(9) 外国人受け入れの問題

労働人口が減少していく我が国にとっては、GDPを拡大するためには合理的な判断だろう。一方で、民間企業としては総論賛成・各論反対であろうから、今後どのような形で普及が進むか見ものである。

副業普及の起爆剤は「労働者不足」

一番の起爆剤は「需給バランスの崩れ(労働者不足)」になると思う。2007年頃から「団塊世代の退職によって労働力不足になる」と言われていたが、採用側だった筆者の立場では全く実感はなかった。恐らくデフレとリーマンショックによる不況で企業の採用意欲が減っていたことが原因だったのだろうと思う。

しかし、”ブラック企業”という言葉が新語・流行語大賞を受賞した2013年頃を境にして状況は一変し、サービス業を中心に人手不足が一気に顕在化した。その後も長時間労働に対する社会的な批判は強まる一方であり、今後は労働時間は減りこそすれ、増えることはないだろう。
少子高齢化や人口減少などの労働供給側の要因もふまえると、よほど大きな環境変化がない限りは企業が採用難に陥っている状況はあまり変わらないであろう。働き手不足が深刻化して、社員を採用するためには副業・兼業を認めざるを得ないという状況が普及を後押しすることになるだろう。

編集後記

企業にとっては大変な時代になってきた。より短い労働時間でより高い収益をあげられるような、労働生産性の高い企業だけしか生き残っていくことは困難になるだろう。しかし、淘汰が進むことで最終的には過当競争がなくなるため、生き残った企業は残存者利益を得て収益力が高まるだろう。

労働者にとっては良い時代になってきた。「副業・兼業」をはじめとした契約形態の多様化が進むことで、より自分らしく生きるためのワークスタイルを模索する機運が高まっていくと思う。しかし、AIやロボットの技術進化に伴う、企業の”雇用なき成長”の時代もすぐそこまで迫っている。人手不足の上に胡座をかいていると将来は失業と貧困に陥る恐れもあるので、決して楽な時代にはならないだろう。

[調査結果の詳細] リクルートキャリアのプレスリリース記事ページを見る

兼業・副業に対する企業の意識調査 | プレスリリース | リクルートキャリア - Recruit Career
株式会社リクルートキャリア(本社:東京都千代田区、代表取締役社長柳川昌紀)は、「独立・開業」をサポートするサービス「アントレ」において、兼業・副業に対する企業の意識について調査を実施しました。調査結果について、一部抜粋してご報告申し上げます...
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