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公務員の副業が解禁される時代が到来!

公務員の副業が禁止されているのは、税金で雇用されている立場でありながら他の仕事を兼業することは公務の遂行上で問題があるという考えによるものです。

ただ、少子高齢化が進むなか、全国で約274万人で労働力人口の約4%を占めている地方公務員(国家公務員まで含めると約333万人・5%)を地域活動の担い手として期待する見方も出てきました。

2020年1月10日、総務省は各自治体に対し、公務員が報酬のある活動に参加する許可を得るための分かりやすい許可基準を作るように求める通知を出しました。

いよいよ公務員の副業が解禁される時代が到来しています。

公務員の副業を禁止する法律について

まず前提として、地方公務員・国家公務員の副業は法律では以下のような形で禁止されています(地方公務員法38条・国家公務員法103条、104条)。

私企業からの隔離(国家公務員法第103条第1項
職員は、営利を目的とする私企業(以下営利企業という。)を営むことを目的とする会社その他の団体の役員等の職を兼ね、又は自ら営利企業を営んではならない。

他の事業又は事務の関与制限(国家公務員法第104条
内閣総理大臣及び所轄庁の長の許可がない限り兼業してはならない。

営利企業等の従事制限(地方公務員法第38条
1 職員は、任命権者の許可を受けなければ、営利を目的とする私企業を営むことを目的とする会社その他の団体の役員その他人事委員会規則(人事委員会を置かない地方公共団体においては、地方公共団体の規則)で定める地位を兼ね、若しくは自ら営利を目的とする私企業を営み、又は報酬を得ていかなる事業若しくは事務にも従事してはならない。
2 人事委員会は、人事委員会規則により前項の場合における任命権者の許可の基準を定めることができる。
(1)他の仕事をすることで、肉体的や精神的に本業に集中できず、仕事に支障が出ることを防ぐため(職務専念)
(2)本業の秘密を、副業の際に利用、流出されないため(秘密保持)
(3)世間的にイメージの良くない副業につくことにより、勤務先の社会的な信用を損なわせないため(信用確保)」

地方公務員の副業を後押しする自治体も現れ始めた

上記のような前提がありながらも、職員が副業しやすい環境づくりに取り組む地方自治体が現れはじめました。いち早く取り組んだのが神戸市です。”5年以内に副業先との契約・補助に関する業務に就いていないこと”を条件に、報酬をともなう地域活動を促す「地域貢献応援制度」を開始しました。

また、奈良県生駒市は公共性のある団体での副業を後押しする内部規定を導入しました。在職3年以上の職員が対象で、市と利害関係が生まれないといった一定の基準を満たせば報酬の受け取りを認めるというもの。

副業を認める自治体はまだ僅かですが、働き手として潜在的なパワーを秘めていおり、今後はますます期待が高まっていくとみられています。

これまでも問題なかった副収入を得るための方法

こうした社会的な流れとは別に、もともと公務員が副収入を得るための方法は存在していますので、復習も兼ねて整理してみたいと思います。

株式投資などの資産運用は副業とはみなされず(未公開株の取得は除く)、届け出をすることなく行えますのでここでは除きます。

基本的に禁止されているのは企業への就職自営です。

そして、自営の場合に禁止されている職業は「大規模な農業、牧畜、酪農、果樹栽培、養鶏等」、「賃貸・不動産業(貸出物件数・賃貸収入の条件を満たせば可)」、「太陽光電気販売(10kw未満は可)」となっていますので、これらに該当しない場合には規定がありません。

従って、例えば自営として文筆業(作家活動)を行う場合は、国家公務員法や地方公務員法の「(1)信用失墜行為の禁止」「 (2)守秘義務」「(3)職務専念の義務」に反しなければ、副業として従事しても問題はないことになります。ちなみに、通商産業省の官僚であった故・堺屋太一氏は、在職中(1975年)に「油断!」で小説家デビューし、1976年には「団塊の世代」を発表するなど、1978年に退官するまで、作家活動を行なっていました。

それでは、講演活動はどうでしょうか。勤務時間外に講演・助言・意見で謝礼を得る行為は国家公務員法第103~104と地方公務員法第38条にある「報酬を得る事務に従事してはならない」に触れるために禁止されていますが、専門性の高い研究や地域貢献できる分野であれば、許可を得ることで実施できます。

また、地方では該当する人が多いと思いますが、実家の農業を兼業することについては、「自営兼業承認申請書」を提出して、許可が出れば可能になります。

公務員の副業の代表格である不動産投資

公務員の副業の代表格である不動産投資(賃貸業)については、国家公務員の就業規則を定めた人事院規則によると、不動産の賃貸業については、貸し出す物件数が5棟以上(区分所有は10室以上)、または年間の賃貸収入が500万円以上ある場合はNGになります

ということは、保有する物件が4棟(区分所有は9室)まで、家賃収入は年間500万円未満。入居者の募集や家賃の集金などは管理会社に委託しているのであれば、所属している職場に「自営兼業承認申請書」を提出して、許可が出れば不動産賃貸業を営むことが可能になります。

《公務員の不動産投資が認められる範囲》

  • 貸し出す物件の数は5棟(区分所有は10室)未満
  • 駐車場は10台未満
  • 年間の賃貸収入が500万円未満
  • 物件の管理業務はすべて管理会社に委託する
  • 太陽光発電による売電収入は10キロワット以下
  • 公務員の職務と大家業との間に利害関係が生じないこと
  • 所属している職場に副業の届け出をすること

妻や家族名義での会社経営は大丈夫か?

「Yahoo知恵袋!」や「教えて!Goo」などで、「妻の名義で会社を作って副業をするのは違法ですか?」といった疑問があります。

まず、名義貸しは違法行為のでその点はしっかりと理解しておいて下さい。

その上で話を先に進めたいと思います。

所得税法第12条に「事業を行う本人が資産の真実の権利者でなければならない」と定められています。
つまり、実際に副業を行っている本人が確定申告を行わなければならないということになります。

ここで大事なのは、事業に関わる方針を立てて具体的な指示を出している人(すなわち経営者)は誰か?ということです。

つまり、妻が名義人であり、かつ会社の事業の方針や指示を出していて、公務員の夫がその事業を無報酬で手伝っていた場合は、夫は権利者にはあたらない(副業ではない)ということになります。

所得税法ではこのような解釈になりますが、副業禁止の3原則といわれる国家公務員法第99条・信用失墜行為の禁止第100条・守秘義務第101条・職務専念の義務があり、任命権者の裁量で判断できる余地がありますので何処までいっても絶対はありません

まとめ

少子化・高齢化と同時に人口減少が急激に進む我が国では、今後は公務員も経済活動に参加することが必要になってくるでしょう。

総務省の発表によれば、2018年度に許可された副業の数は4万1669件とのことです。

NPO法人や非政府組織(NGO)などの非営利団体などは特に人材不足で悩んでおり、大手転職サイトへの求人掲載数も急増しています。

税金を報酬としてもらっている公務員が、一定のルールのもととはいえ副業が認められる社会になるのですから、普通の民間企業で副業が認められるようになるのは間違いありませんね。

2021年1月には、与党自民党の中で、民間企業において既存の週休2日制度を維持しつつ、希望者が週休3日を確保できるよう後押しすることを政府への提言としてまとめており、ゆくゆくは公務員にも広げていく展望があるというニュースも出てきています。

公務員の働き方も大きな変化が迫っているように見えます。