社会課題

空き家問題に挑む注目ソーシャルビジネスまとめ

Gerd AltmannによるPixabayからの画像

空き家問題は人口減少・高齢化・少子化といったメガトレンドを背景にしているため、一朝一夕に解決できる問題ではありませんが、それだけに様々な角度から、かつたくさんのアプローチが必要となります。

空き家数の現状と今後の見通し、そして空き家が増えることでどのような問題が起きるのか解説すると同時に、 空き家の流通を活性化するビジネスに留まらず、空き家を活用してコミュニティ作りをしたり、新しいライフスタイルを提案するようなビジネスモデルを構築している、面白くて新しい「空き家×ソーシャルビジネス」を紹介します。

空き家数の現状と今後の見通し

空き家数の現状

2015年に発表された総務省統計局の「平成25年住宅・土地統計調査」では、2013年の全国の空き家数は約820万戸(全住戸の7分の1)でした。そこから売却用や賃貸用などで不動産会社が管理しているものを差し引いた「所有者による定期的な利用がされていない状態の空き家」が2013年時点で318万戸となっています。

問題とされるのはこうした放置状態の空き家が増えていることです。空き家数の約4割を占めており、かつその割合は増加傾向にあります。

空き家数の今後の見通し

今後は、第一次ベビーブーム(1947年から1949年)のときに生まれた、人口の多い「団塊世代(2020年時点で70〜73歳)」が亡くなる際に、その子供の団塊ジュニア世代が親の住宅に住まず、売るに売れない状態になると著しく増える懸念があります。

このままいくと15年後には倍以上となる2,000万戸にまで拡大することが予想されています。

空き家問題が起こる背景と原因

空き家が発生する最も一般的な原因は、自宅を所有する高齢者が老人ホームなどの高齢者住宅や子供宅などに転居することです。今後は団塊の世代を含めた高齢者は急激に増えていくのに伴って空き家もどんどん増えていきます。

また、税制上の問題もあります。
住宅が建っている土地は更地よりも土地の固定資産税が安くなるという「住宅用地の軽減措置」が適用されているため、空き家を壊して更地にしてしまうと固定資産税が上がってしまうのです。

空き家が増えることで起きる問題

それでは、空き家が増えることで実際にどのような問題が起きるかについて説明します。

地方自治の崩壊

空き家問題は個人だけでなく地域全体に影響を及ぼします。その中の最たるものが、地方自治体の財政破綻でしょう。

空き家が増えるということは地域に住む人が減るということを意味します。すると税収の減少や施策の非効率化によって、道路や水道といったインフラを維持することが難しくなります。
2013年の調査結果では空き家率は13.5%でしたが、空き家率が30%を超えると財政破綻が懸念されます。2007年に財政破綻した北海道夕張市の空き家率は33%、2013年に財政破綻した米国のデトロイトは29.3%でした。

近隣住民への悪影響

住人不在の住宅は傷みが一気に進行します。老朽化が進むと屋根や外壁が剥がれ落ちたり、建物が傾いて倒壊する危険性が高まったりするなどの問題が生じます。

また、庭の雑草が伸び放題となってしまい景観を乱すだけでなく、蚊やスズメバチや害獣の発生にもつながります。

それ以外にも、ホームレスなどの不法占拠、粗大ゴミなどの不法投棄、放火の原因になるといった可能性があり、近隣住民に悪影響を及ぼします。

地域の資産価値の減少

空き家が増える一方で供給が減らないとその地域全体の住宅価値が下がるという問題もあります。
また、地域の人口が減ることでスーパー・銀行・診療所といった施設の撤退につながり、地域の利便性が低下してますます地域の資産価値が減少する、という負のスパイラルに陥ってしまいます。

空き家問題への対策として注目される不動産テック

空き家問題対策として、AIやVRといった先端技術を活用した不動産テックが注目を集めています。

例えば、アットホームとLIFULLによって、これまでは各地方自治体が個別に運用していた空き家情報を一元化した「全国版空き家・空き地バンク」の運用が2018年4月から本格的に開始されました。
国土交通省の発表によれば、2019年2月には全国603自治体・延べ9,000件を超える空き家等の情報が掲載されるようになりました。また、そのうち1,900件以上の物件が成約したということです。

空き家問題に挑む注目ソーシャルビジネス

空き家情報を整理することによって機会損失を減らすことはできますが、実際に借り手の需要がなければ空き家問題は解決しません。
そこで、空き家を活用して借りての需要を創出しているビジネスや取り組みを紹介します。

AKIDAS(空き家活用株式会社)

AKIDASのサイト▼運営サイト: AKIDAS

不動産事業者以外の様々な業種の事業者に対して、現地調査により作成した空き家や空き地をデータベース情報を提供しています。「空き家問題を解決する新しいビジネスを創造する」ためのWebサービスとなっています。

ADDress

ADDressのサイト▼運営サイト: ADDress

日本各地でADDressが運営する家に定額で住み放題というサービスです。空き家にリノベーションを施して会員に貸すことで空き家問題を解決すると同時に、

  • リモートワークをしながら時間と場所に縛られずに過ごせる
  • 都市と地方の複数の拠点で生活ができる
  • 好きな時に好きな場所で暮らせる

といった『多拠点居住』という、時間と場所に縛られない新しいライフスタイルを提案しています。

カリアゲJAPAN(あきやカンパニー)

カリアゲJAPANのサイト▼運営サイト: カリアゲJAPAN

空き家を貸し出すためにリノベーションは効果的ですが、所有者にとっては借り手探しに加えて費用面の負担が大きくなってしまいます。
そこで、カリアゲJAPANでは、借主が空き家をリノベーションして6年間運用するという事業を展開しています。

  • 貸主は改修費用を負担せずに家賃収入を得ることができる
  • 貸主は契約期間(6年)終了後は、改修された物件を自由に活用できる
  • 借主は空き家を自分好みに改修できる(原状回復は不要)
  • 借主は相場よりも安い家賃(相場の1~7割)で物件を借りれる

といったように、貸主・借主ともにメリットを得ることができます。
更に、カリアゲJAPANでは、同社が空き家を買い上げたり、そのままの状態で借り上げて改装可能な物件としてサブリースするといったサービス等も展開しています。

ボーダレスハウス

ボーダレスハウスのサイト▼運営サイト: ボーダレスハウス

通常借り手がつかないような空き家を、貸主に対しては家賃保証をしてリノベーションし、シェアハウスを運営しています。
入居者の半数が外国人となっており、国際交流の意識が高く、交流したい人たちだけが集まる質の高いコミュニティづくりに力を入れています。そのため、家賃を高めに設定しているにも関わらず稼働率は高くなっています。

Rennovater

RENNOVATORのサイト▼運営サイト: Rennovater

単身高齢者・外国人・生活保護受給者などの住居を簡単に借りられない人たちに、購入・リノベーションした空き家や築古物件を低廉な家賃で提供しています。(2020年1月現在、東京・埼玉・千葉・大阪で合計45室)
それだけに留まらず、入居者に対して生活相談や買い物代行、就労支援プログラムといった生活・自立支援サービスを提供して、入居者の生活改善や新たな挑戦を支援する予定とのことです。

  • 住宅確保困難者には「低価格で良質な住居を提供」
  • 地域社会には「空き家の活性化」
  • 行政・自治体には「住宅確保困難者の住居問題を公費負担無しで解決」
  • 地球環境には「既存ストックの活用で環境負荷を軽減」

を価値として提供するという素晴らしい事業モデルとなっています。

みんなのうえん

みんなのうえんのサイト画像▼運営サイト: みんなのうえん

一般社団法人グッドラックが大阪市の住之江区北加賀屋で、無農薬にこだわった貸し農園の運営に加えて、食と農を介して地域の人々が通いたくなるコミュニティづくりを展開しています。
街なかにある住宅跡の空き地を畑に変え、隣接する空き家をキッチン付きのサロンスペースに改装して、農園利用者から地域の人々が気軽に参加できるイベントを定期的に開催しています。
人口減少によって増加する遊休不動産やコミュニティの希薄化という地域課題まで解決する取り組みをモデル化しようと、2020年4月には2拠点目を寝屋川を立ち上げて運営しています。

アキサポ

アキサポのサイト画像▼運営サイト: アキサポ

不動産の売買・賃貸・仲介および空き家活用事業を展開する株式会社ジェクトワン(本社:東京都)が運営する、首都圏の空き家を借り受けて、アキサポが全額費用負担で地域に必要とされる活用法をプランニングしてリノベーション工事を行い、利用者とマッチングさせて一定期間転借するサービス。
空き家オーナーには「建物がバリューアップして戻ってくる」「リノベーション費用はアキサポが全額負担」といったメリットがあります。

日本の空き家問題の新たな解決策として「空き家活用」という選択肢を普及させるため、空き家専門情報メディア『アキヤノワダイ』の運営も行なっています。

空き家問題に挑む注目ソーシャルビジネスまとめ|おわりに

空き家が社会問題となるなかで、日本政府としても対策に乗り出しています。
商業利用を促すことで空き家を解消するために、2019年6月に改正建築基準法を施行して、空き家住宅の用途変更の要件を大幅に緩和しました。
また、内閣府の「Society5.0」のなかで、中古住宅の流通市場を2025年までに8兆円規模に押し上げるという目標を立てています。

この記事では、空き家問題に挑む新しいソーシャルビジネスを紹介しました。今後もどんどん新しい情報を追加してお知らせしますので是非継続的にフォローよろしくお願いします。
また、”空き家”ならぬ、“空き寺院”を活用した新しいサービスなども別の記事にて紹介しています。

当サイトで以前ご紹介したシェアリングビジネスも空き家や空き地の活用に貢献するビジネスモデルだと思いますので、こちらも合わせてご覧ください。

シェアサービスまとめ【空間・移動・モノ・お金】遠くない未来の個人は、本や洋服といった「消耗品」から車や不動産といった「資産」に至るまで、モノを買う時にはシェアサービスを視野に入れつつ...
駐車場シェアサービス7選個人や企業が使っていない空き駐車場やスペースを貸し出す「駐車場シェアサービス市場」が拡大期を迎えています。 遊休スペースを保有する個人...
ABOUT ME
はいぶりソーシャル編集部
はいぶりソーシャル編集部
社会課題やソーシャルビジネスカテゴリーの記事を担当しています。