ワーク・ライフスタイル

他社留学という研修サービス | 「他流試合」でこそ人は育つ

「他社留学」という、会社員の人材育成サービスをご存知でしょうか?

「他流試合」の中でこそ、新しいアイデアが生まれる可能性があり、マネジメント力も格段に身につくという考え方から生まれたサービスです。

働き方改革のウネリの中、副業の解禁が話題になることが増えてきたが、最近の大手企業においては異業種合同のプログラムやNPOへの派遣などの関心が高くなっています。

7割「自社」、3割「他社留学」というコンセプト

「他社留学」というスタイルの研修サービスを展開するのは人材サービスのエッセンス株式会社(東京都中央区)で、サービス名は「ナナサン®」。7(ナナ)割現職、3(サン)割他社留学、というコンセプトから名づけられました。

大手企業の次世代リーダー候補社員に対して、現職の業務を続けながら他社に週1回程度出向き(人材受入れ企業は無料)、他社のリアルなビジネスミッションに向き合う修羅場体験を通じてキャリア開発を行う研修サービスとなっています。

受け入れベンチャー企業側にもメリットあり

業務内容は、一見すると子会社へ出向させるのと大差がないようにも見えますが、自社グループにない事業領域を体験することによるイノベーションの可能性、大企業の子会社とは異なる、ゼロから立ち上がったベンチャー企業の文化に触れられるということは大きな意識変革につながると思われます。

一方、受け入れ側のベンチャー企業は、大企業の優秀な人材が自社の課題解決に参画することで視点を広げることができるといったメリットを得られたり、人脈面でのネットワーク形成につながる可能性などがあるでしょう。

導入事例としては、オフィスコンサルティング事業を行う株式会社フロンティアコンサルティングというベンチャー企業に対し、東京電力ホールディングスの幹部社員が実践したものがナナサンのホームページ上で紹介されています。

取り組み内容は、現場把握・コスト管理の在り方検討・役員とのセッション・調達部設置の検討などを通じて、建設部門における仕入れコストの見直し(コスト管理の平準化マニュアル作成)を行うというもの。期間は週1回・4時間を3ヶ月間といった感じになっています。

他社留学の経験を活かす事例も出てきた

ローンディールのサイトトップ画像 ▼企業サイト:ローンディール

2015年に「他社留学」のサービスを始めた株式会社ローンディールでは、2021年1月現在では「レンタル移籍」として、大企業の人材が12か月程度ベンチャー企業で働き、価値創造や事業開発に取り組む仕組みを提供しています。

2018年度の導入企業はパナソニックや関西電力など13社に達し、前年比3倍近くに成長、2019年度からは住友商事やIHI、味の素、日産自動車などが加わる見通しで、年間移籍人数は40人と倍増しました。

成長期で組織づくりなどの専門人材が不足するスタートアップ企業にとっては、仲介料を払うことで即戦力を招くことができるという利点があり、同社の受け入れ側の登録社数は200社に達しているとのことです(2019年1月現在)。

半年間、音楽共有アプリのnanamusicに移籍した大鵬薬品工業の社員が、自由に情報を発言する文化に刺激を受け、戻った後に社内SNSを新設するなど、「他社留学」の経験を出身企業に戻って生かす例も出てきているようです。

仕事を辞めずに成長企業の経営を覗けるサービス「サンカク」

サンカクのサイトトップ画像▼企業サイト:サンカク

しかし、その一方で、大企業は優秀な社員ほど外に出したがらないという現実の声を耳にすることも多いので、リクルートキャリアが主催する「サンカク」といった、社員が自ら他流試合に申し込めるサービスも登場しています。

中小零細企業はそうしたサービスを利用するという手もあるでしょう。

ビジネスパーソンが自ら登録して参加できるマッチングプラットフォームで、様々なプロジェクトが登録されており、参加者の負荷は限定された内容になっています。

「サンカク」の企業側と参加者側のそれぞれのメリット

<企業側>

  • 意欲的な(大企業を中心とした)優秀なビジネスパーソンの意見を聞ける
  • 転職サイトで応募してくる層とは違う人材に対する採用アプローチにもなり得る

<参加者側>

  • 成長企業の経営者や事業部長クラスの人と直接会ってディスカッションする経験を得られる
  • 人脈を広げることができる

サンカク利用の流れ

サイトに登録後は以下のような流れで興味のあるプロジェクトに参加者が応募していく形となっている。

  1. 気になる案件に「興味がある」からエントリー
  2. 企業の担当者が興味を持つと企業から返信が届く
  3. 企業の方とのディスカッションに参加

企業、参加者ともに気軽な形で「セレンディピティー(偶然の発見)」を求めるような雰囲気が感じられます。

「実践的な研修」と「プロボノ(専門家が知識・スキルを活かして社会貢献するボランティア活動)」の中間のような形のようであり、新しい人材紹介サービスのようでもあります。

面白い試みなのでサービスとして継続・発展していって欲しいと思います。

まとめ

こうした「幹部人材育成」への取り組みは、大企業とベンチャー企業に集中しており、中小零細企業は取り残されてしまっている感じがあります。

この差はそのまま人材獲得競争力の差につながり、最終的には企業の命運を左右していくことになるでしょう。

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