働き方

働き方改革がビジネスのネタとして注目度を高めている

政府の旗振りで「働き方改革」が注目を集めているが、いち早く自社をモデルケースとして働き方の変革に着手し、その成果を自社のサービスとしてビジネスに展開していく企業が目立ち始めている。

テレワーク支援ツールを働き方改革のツールとしてビジネス化

日本Microsoftでは、2011年の本社移転を機に、社内をフリーアドレス化し、どこからでもネットワークにつながるようにした。また、同じく2011年に米国本社が買収したSkypeを使った遠隔会議を実施することで関係者の時間や場所の調整に要する時間を大幅に短縮した結果、「残業時間や旅費・交通費の削減」「社員満足度や生産性の向上」「女性の離職率の低下」につながった。

こうした成果をビジネスとして顧客に提案している。一例として、三井住友銀行はマイクロソフトのパブリッククラウドサービスなどを活用し、時間と場所の制約を受けずに業務可能な次世代ワークプレイス環境の構築に着手した。育児や介護で出勤が難しい社員に活躍の場を提供するとともに、業務効率化や人材の有効活用を図る。

最近では、富士通が2017年4月から全社員約35,000人を対象とした「テレワーク勤務制度」を導入したことが話題となった。

システムエンジニアをはじめ常態化している長時間労働の是正は急務だった。人手不足に悩む企業が急速に増えるなか、この試みが成功すれば自社で開発するテレビ会議システムなどを外販できるという思惑もあって、12の職場で400人を対象に試行した。様々な壁にぶつかったものの、1年経過した際のアンケートでは7割が「生産性が向上した」と回答する結果になった。

今後は実践を通じて得た気づきやノウハウを働き方改革の企画からソリューションの導入、運用まで、顧客への提案に生かしていくとしている。

不動産事業者は本社オフィスを働き方改革のショールームに

本日の日経新聞(2017年3月10日)記事によると、三菱地所や野村不動産が本社ビルの一部をモデルケースとして時間や場所の制約を受けないオフィスビルや、アイデアを生む実験スペースとして利用するとのことだ。「考え事に没頭する」「知識を覚える」「社員同士の交流を促しアイデアを生み出す」といった目的にあわせて働く場所を選べるようにする。

自社の生産性を高めると同時に、新しいオフィスビルの形をテナント企業に示す狙いがある。

大口投資家も働き方改革を要求しはじめた

最近の新聞紙面では人手不足によるサービス縮小やAI導入といった労働者不足問題に関する記事を見ない日がないくらいだ。

政府や各企業の取り組みが目立つ中で、働き方改革に関連した投資家の動きも注目され始めた。

2017年3月8日の日経新聞記事によると、ブラックロック・ジャパンは6日、投資先の日本企業400社超に株主としての期待を伝える手紙を送った。労働者の格差拡大やテクノロジーの進歩による失職の問題を指摘し、企業の持続的成長には従業員の働きがいや満足度が重要なことが明らかになったとして、働き方改革を通じた投資や工夫を求めている。ブラックロックはグループで1000社以上、20兆円強の日本株を持つが、株主総会での議決権行使でも考慮の対象にする方針とのことなので、東証一部上場の有力企業を中心に大きな影響を及ぼすだろう。

別の記事では、中東系の政府系ファンドが2年半前から一手不足の解決策を持っている企業のリストアップを証券会社に求めていたという話も掲載されていた。

環境や社会問題に配慮する「ESG投資」への注目が高まっているが、従業員の満足度もESG投資の項目として組み込まれていくかもしれない。

大企業を中心に働き方改革が加速している

「労働生産性を高める」という方向性に関しては、企業の経済合理性にも合致している。

同日の日経新聞の記事では、大和ハウス工業が賞与の算定基準を「社員1人当たり利益」から「社員が働いた1時間当たりの利益」に切り替えたところ、残業が減って生産性が高まり社員の賞与も増えたという話や、戸田建設、カゴメといった優良企業が生産性を経営指標として公表しはじめたという事例が紹介されていた。

人口減少に伴う人手不足や過剰労働への批判が世間では高まっており、生産性の低さを現場の長時間労働で補ってきたこれまでの構図は既に成り立たなくなっている。

働き方改革は労働者にとって良い話ばかりではない

こうした動きによって、長時間労働問題は企業体力のある大手企業を中心に減少していく可能性が高いが、生産性が追求されることによって、今度は知的・精神的なプレッシャーが強まっていくことは避けられないだろう。

そのことによって、物理的な労働拘束時間は減るものの、勤務時間外においても仕事のことを考え続ける時間が増えることが想像される。

また、AIやロボットへの仕事の置き換えが進むことで徐々に労働者不足の解消が進むという可能性もある(2030年までに今ある仕事の半分は人工知能に奪われるという試算もある)。その時、産業界から求められる知識とスキルを保有していない労働者は失業の憂き目にあうことになるだろう。

まとめ

働き方改革と最も相性が良いのが、時間と場所の制約を緩めるテレワーク周辺のITビジネスであることは間違いないだろう。不動産事業者は在宅ワークの普及によってオフィス面積が縮小していくことが予想されるためピンチとなる一方、価値を生みだすオフィスづくりや、郊外型のテレワーク拠点整備等にはチャンスがあるかもしれない。

また、ここでは触れられなかったが、リクルートキャリアをはじめとした人材紹介会社では、自ら「副業ok」や「時短勤務」などの契約形態を積極的に導入し、生産性を高めていく姿を見せていくことで、顧客企業に対する手本となるような動きをしていることにも注目している。

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