働き方改革の先進企業であるヤフーを皮切りに、従業員の居住地の制限を撤廃する大企業が現れてきました。2022年6月には、国内最大規模の伝統的大企業であるNTTが、グループ主要企業を中心に原則テレワークとする方針を発表しました。
コロナ禍が落ち着きを見せ、原則出社に戻す企業が増えつつあるなか、更なるリモートワーク、ハイブリッドワークの浸透へと舵をきる企業との間で二極化が進む可能性がでてきています。
本稿では、従業員の居住地の制限をなくす大企業を紹介します。
目次
従業員の居住地の制限をなくす大企業一覧
メルカリ
2021年9月1日から、メルカリ、ソウゾウ、メルペイ、メルコイン4社の全社員と、メルカリUS所属で日本国内で勤務する一部社員を合わせた従業員約1,800人を対象に、リモートワークかオフィス出社かを従業員が選択できる「YOUR CHOICE」という勤務制度を開始しました。
日本国内であれば、住む場所や働く場所にも制限を設けず、自由に選べる制度となっており、交通費は実費支給で月額15万円を上限としています。
地元に住みながら仕事をしたり、北海道などの地方に移住したりする従業員もいるとのことです。
ヤフー
2022年1月12日、全ての社員が全国どこでも自由に居住できる新たな働き方を4月に導入することを発表しました。
4月1日から、現在の「電車や新幹線、バスで午前11時までに所属先のオフィスに出社できる範囲」という条件から、「航空機や高速バスでの出社を認め、時間制限と交通費上限(片道6,500円)を撤廃。月15万円まで支給する」へと変更することになりました。
ヤフーでは、2022年1月時点で全社員8,000人の約9割が在宅勤務していましたが、9割が在宅勤務でも業務への影響が「なかった」「向上した」と回答したというアンケート結果をもとに、今回の方針を決めたとのこと。
在宅勤務に対する補助金も月1,000円増額して、毎月最大1万円を受け取れるようにするほか、希望者にはタブレット端末を無償貸与。コミュニケーションを促進するための社員同士の懇親会費を1人あたり月5,000円まで補助するといった支援策も強化するとのことです。
ミクシィ
ミクシィでは、コロナへの対応として、2020年春から「フレックスタイム制」を導入し、コアタイムを正午から午後3時までに設定したほか、週3日まで在宅勤務を可能とする試験運用を実施してきました。
業績には影響がなく、社員向けのアンケート結果からも、在宅勤務が増えても生産性に大きな影響がないことが判明したことから、更に自由な働き方を認めるべく、2022年4月から全従業員約1,200人を対象に、正午までに出社できる範囲なら全国どこに住んでも良いということになりました。
それまでは電車かバスで通勤できる範囲内での居住を社員に求めていましたが、5月からは定期券代の支給をなくして通勤交通費を月15万円までとし、飛行機や新幹線、フェリーなどでの出社も認める、という条件へと変更になりました。
セガサミーホールディングス
セガサミーは、2022年4月から育児や介護などに携わる社員を対象に、働く時間と場所を選択できる制度を始めました。
これまでも居住地や通勤手当の上限はなかったものの、新幹線や飛行機での通勤費は支給していなかったため、在来線で通える範囲内での居住が基本になっていたところ、4月以降は新幹線や飛行機での通勤も実費精算(上限なし)となります。
ディー・エヌ・エー(DeNA)
ディー・エヌ・エーは、全社員約2200人を対象に、6月から国内のどこでも居住できる制度を開始しました。
これまでの交通費支給の上限であった1日あたり7,500円だったのをなくし、通勤に必要な交通費を1ヶ月あたり15万円へと変更しました。
出社頻度は部署によってルールはあるものの、会社一律の規則はないとのことで、この制度を利用する場合には承認を得る必要があるとのことです。
IT(情報技術)業界では人材の獲得競争が激しくなっており、2022年1月にはヤフーが、全ての社員が全国どこでも自由に居住できる新たな働き方を4月に導入すると発表したことに始まり、ミクシィやセガサミーなどのIT企業大手にも対抗して制度開始に踏みきったものと思われます。
NTTグループ
2022年6月18日、日本経済新聞が報じたところによると、NTTグループは、NTTドコモやNTTデータなどの主要7社を対象に、従業員の半分を占める3万人を対象に、原則テレワークとする方針を固めました。
2022年7月から自宅やサテライトオフィス勤務を基本として、国内どこでも自由に居住できる制度を導入。出社が必要になった場合は「出張扱い」として交通費の支給上限を設けずに、飛行機での出社も認め、宿泊費も会社が負担。
オフィスへの出社を前提としない多様な働き方を認めることで、優秀な人材の獲得につなげていくことを狙いとしているようです。
アクセンチュア
大手コンサルティングファームのアクセンチュアは、日本法人所属で顧客との契約やセキュリティー上の問題がない等と判断された従業員を対象に、2022年8月から国内の居住地を自由とする制度の導入を発表しました。在宅勤務を前提としており、一定の条件を満たせば遠方からの交通費も支給。詳細については今後詰めるとしています。
同社ではこれまで、2時間以内で通勤できる範囲での居住を求めていました。
働く場所(ワークプレイス)を選択できる制度も
リモートワークやハイブリッドワークの導入によって居住地の制限を撤廃するIT系の企業が出てくる一方で、結婚や親の介護といった事情によって離職するケースを減らして、人材をつなぎ留めるための制度を導入する企業も現れてきました。
ANAホールディングスでは、パイロットを除く正社員約3万8千人を対象に、グループ会社に転籍することで勤務地を選べる「ワークプレイス選択制度」を2022年度中に導入することになりました。転籍先はグループ企業約40社で社員の希望に応じて転籍を認め、給与などの待遇は転籍先の規定に合わせるとのことです。
おわりに
近年では、「副業ok」「週休3日(週4日勤務)」といった制度を導入する大手企業が増えてきましたが、これに加えて、2022年は「居住地の自由」を認める動きが出てきました。 働き方の自由度は相当高まってきたと言えるでしょう。