2017年6月に住宅宿泊事業法(民泊法)が成立し、2018年6月には法律が施行されます。
民泊の位置付けが法的に明らかになったことで、これまで二の足を踏んでいた国内企業が一斉に市場参入しています。副業で不動産投資をしているオーナーにとっては、民泊市場の拡大は願ってもない追い風になるでしょう。
目次
2020年には民泊市場規模は2000億円に成長
データ解析などを手掛けるメタップスの調査によると、民泊市場は2020年に2,000億円となり、2017年予測数値の2.4倍にまで広がる見通しとのことです。
現在の民泊利用者は9割以上が外国人とのことで、日本人が利用するようになると市場の拡大余地はとても大きく、国内産業の成長をけん引する意味でも、シェアビジネスへ期待がかかっているとのことです。
先行する米エアビーアンドビーと後を追う国内企業の動向を整理してみました。
エアビーアンドビーの動向
民泊仲介の世界最大手である米国のエアビーアンドビーは、旅行に関するすべてを同社のアプリで完結できるようにするという、「トリップ」構想を打ち出しています。そして、日本市場においても構想実現のために着々と手を打っています。
全日空と提携
2017年11月、宿泊先と航空券を組み合わせて予約できるようにする目的で、全日本空輸グループと組んで特設サイトを共同運営すると発表しました。
この特設サイトを通じてエアビーの登録宿泊先に泊まるとマイルが貯まるようになるとのことです。また、航空券と宿泊先に加えて体験プランも提案していくみたいです。
また、2017年夏から国内航空券のネット販売最大手のエボラブルアジアと提携して高級旅館やホテルの予約サービスを始めると発表しています。
その他企業のニュース
エアビーアンドビーが着実に成長を続ける一方で、中国の民泊最大手の途家(トゥージア)や、日本の大手企業である楽天を始め、たくさんのベンチャー企業が民泊市場に参入して後を追っています。
途家(トゥージア)と楽天が提携
中国の民泊大手の途家(トゥージア)は日本法人を設立して中国人観光客向けに中国語で日本の物件紹介を始めています。
楽天は民泊事業でその途家と提携しました。また、米旅行サイト最大手「エクスペディア」子会社のホームアウェイ、台湾の民泊サイトを運営するアジアヨーとも提携するなど、矢継ぎ早に提携を発表して日米中台連合で海外旅行者の取り込みを図っています。
同時に楽天最大の経営資産である、世界9,000万人を超える楽天会員にも利用を呼びかけていきます。
楽天と不動産住宅情報サイト運営のLIFULLが提携
また、登録宿泊先を増やすための施策として、不動産住宅情報サイト「ホームズ」を運営するLIFULLと提携しました。ホームズなどのデータベースに登録する物件もオーナーの許可を得て民泊向けに使えるようにすることを考えています。
スペースマーケットが民泊事業に本格参入
楽天のような大手企業以外にも、ベンチャー企業も民泊市場への参入を表明しています。
当ブログでも度々紹介してきた、空きスペースの貸し借りを仲介する「スペースマーケット」が、新設した民泊の仲介サイト「スペースマーケットSTAY」で民泊法の施行後にサービスを提供するとのことです。
民泊法は年間の営業日数の上限を180日に定めているため、年間を通じて営業することができず、収益性が低くなる懸念がある。それに対し、残りの日数を会議やパーティー向けに時間貸しできることを強みとしています。
KDDI子会社が旅館宿泊サイトで民泊物件の取り扱い開始
KDDI傘下のロコパートナーズが、運営する高級ホテルや旅館の宿泊サイト「Relux」で民泊物件の取り扱いを始めます。リラックスは高級ホテルや旅館を中心に掲載しており、訪日外国人が15%を占めるている。民泊物件でも1泊1万円以上の比較的高級な物件を扱います。
レオパレス21も民泊事業への参入を検討
玄関ドアの鍵をスマホで開け閉めできる「レオロック」を開発し、今後完成する不動産物件に標準設置していく予定とのこと。
鍵の受け渡しが必要ない効率化技術が民泊拡大を後押しするとみています。また、同社の物件は英語、韓国語、中国語などに対応する外国人入居者向けのコールセンターもあるため、そうしたサービスの活用も検討していくとのことです。
終わりに
民泊法が施行されることで、グレーゾーンだった民泊が公の市場として認知されます。そのことで、これまでエアビーの独壇場でしたが、後発企業との激しい競争が繰り広げられる事になると思います。
年間営業日数の上限180日といったルールがあり、利益を確保しにくいという面もありますが、こうした仲介会社同士の競争激化によって、市場そのものの拡大と同時に、物件オーナーにとっては選択肢が増える事に繋がるでしょう。
また、今後さらにインバウンド(訪日外国人)が増えれば、再度の法改正(規制緩和)も検討されるかもしれません。
法律の施行にとってメリット(市場拡大)とデメリット(上限)のどちらの恩恵をより多く受けられるか、注意深く見守っていきたいと思います。