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捨てられるものをアップサイクルして売るビジネス

捨てられるものをアップサイクルして売る方法

今、世の中の企業は、これまでの大量生産・大量消費型から、サーキュラー・エコノミーといわれる産業システムに移行しています。

コンサルティング会社のアクセンチュアによると、サーキュラー・エコノミーの市場規模は2030年には4.5兆USドル(約470兆円)に達することが予測されています。

このメガ・トレンドの中で、捨てられるものを使って新たなものを生み出す「アップサイクル」がサーキュラー・エコノミーの一角として注目されています。

サーキュラーエコノミーとは?

英語で “Circular Economy” と綴ります。日本語に直訳すると「循環型経済」となります。

日本でもよく知られるようになってきたSDGs(持続可能な開発目標)を達成するための実践的な考え方です。

欧米では日本よりも消費者のサステナビリティ(持続可能性)志向が強く、サーキュラーエコノミーへの移行が進んでいます。

▶︎ソーシャルグッドCatalyst「サーキュラーエコノミーとは?リサイクルとの違い・市場規模について」

アップサイクルとは?

英語で “upcycle” と綴ります。

捨てられるものを新しい価値をもった別のものに生まれ変わらせるプロセスのことを意味しています。

広い意味ではリサイクルの一種ですが、原料に戻したり、素材に分解したりする際にエネルギーを使用するリサイクルに対して、そのままの形をなるべく生かすアップサイクルは、環境への負荷を抑えることができるため、リサイクルよりもサステイナブルとされています。

創造的再利用とも呼ばれており、デザインが重要な役割を果たすことから、アーティストとの連携が進んでいます。

捨てられるものをアップサイクルして売る方法

まずはアップサイクルするための素材(廃棄物)を探す必要があります。現在、最も注目されている素材は、社会問題としてクローズアップされている「廃プラスチック」が挙げられます。

素材が決まったら、どんなものを作るかを企画します。自分で一つづつ手作りして販売するという方法や、作ってくれる工場を探して製造を依頼し、自分は販売に専念するといった方法があります。

試作品を作る際には、今流行りのクラウドファンディングを利用するといった方法もあるでしょう。

販売に際しては、小さく手がけるならメルカリなどのCtoCサイトを活用すれば事足りるでしょう。本格的に手を広げようと思ったら、自分で簡単なECサイトを立ち上げ、SNSを駆使して認知度を高めるといった方法が向いています。

その他、デパートなどでのアップサイクルイベントでの展示販売や、アップサイクルを専門小売店で取り扱ってもらうといった方法もあります。

また、アップサイクルしたものを売るだけでなく、ワークショップを開いたり書籍を出版するといった方法でお金を稼ぐなどの方法も考えられるでしょう。

アップサイクルビジネス事例

既に存在しているアップサイクルビジネスの事例を紹介します。

ダンボールを財布にアップサイクル

テレビや新聞などのマスメディアでも多数紹介されている「ダンボール財布」アーティストの島津冬樹氏。

大学生在学中、家にあった段ボールで間に合わせの財布を作ったのがきっかけで段ボール財布を作り始めました。

2018年自身を追ったドキュメンタリー映画『旅するダンボール』が公開されたり、「段ボールはたからもの 偶然のアップサイクル(柏書房)」「段ボール財布の作り方(ブティック社)」などの著書も出版しています。

【サイト】Carton Studio

建築廃材をアクセサリーにアップサイクル

アップサイクルのアクセサリーブランド「KiNaKo(きなこ)」では、建築物をつくるときに出る建材(建築資材)の端材や、取り壊すときに出る廃材を、一点もののピアスやリングに生まれ変わらせています。

【サイト】KINAKO

海洋プラスチックをアクセサリーにアップサイクル

クリエイティブユニットの「カエルデザイン」と、リハビリ型就労スペース「リハス」を利用する障がい者たちがパートナーとなって、マイクロプラスチックなどの海洋プラスチックを回収して、それらをアクセサリーに加工して販売しています。

【サイト】カエルデザイン

廃棄消防ホースをバッグにアップサイクル

UPCYCLE LAB(アップサイクルラボ)では、廃棄消防ホースからバッグを作っています。

ビルや公共施設などに備え付けられた消防ホースの9割は作られたまま一度も使われることなく新品同然のまま廃棄されている現状に目をつけ、これら未使用のまま廃棄される消防ホースを使って商品を作っています。

引き取った消防ホースは洗浄・乾燥させた上で縫製工場へ。熟練の職人が手作業で裁断・縫製し1つ1つ丁寧に作り上げています。

【サイト】UPCYCLE LAB

廃棄消防服をバッグにアップサイクル

同じく廃棄される予定の消防服を使ってカバンなどの商品を作っている会社もあります。

引き取った消防服は社会就労施設で洗浄・乾燥し、同じく社会就労施設で1点づつ手作りで縫製しています。

【サイト】UP FIRE

コーヒーかすを布製品やコースターなどにアップサイクル

2020年の日本国内のコーヒー消費量は約43万トン(全日本コーヒー協会の)となっていて、重量ベースで約85万トンのコーヒーかすが発生していることになります。

このコーヒーかすを再利用して、コーヒーかすで染めた布製品を作ったり、コーヒーかすを固めたコースター、石鹸などの生活雑貨を作ったりといったように、様々なコーヒーかすをアップサイクルした商品が生まれています。

【サイト】UP COFFEE CHALLENGE

ペットボトルのキャップから知育玩具やインテリア小物にアップサイクル

インターネットで「ペットボトルキャップ 知育玩具」と入力すると、ペットボトルのキャップを使って「絵合わせ」する知育玩具にアップサイクルしたり、かわいい小物にアップサイクルして、更にリサイクルアイデアBOOKとして出版したりといったような取り組みを見ることができます。

リサイクルアイデアBOOK

まとめ

スポーツメーカーのアディダスが海洋プラスチック廃棄物からトレーニングウェアを作るなど、世界中の企業がアップサイクルに注目しています。

また、アップサイクルは食の分野にも広がっています。米国のアップサイクル食品市場規模(2019年時点)は5兆1000億円と推定されており、年率5%以上のスピードで成長しています。

▶︎アップサイクルとは?市場規模・アップサイクルビジネス事例

▶︎アップサイクル食品とは?定義・市場規模・国内外の動向と事例

商品を作るに至った背景や想いが重視されるため、価格競争にも陥りにくく、アイデアとデザインセンス次第では個人でも十分に戦える可能性があり、かつ世のためにもなるという意味ではやり甲斐の大きなビジネスではないでしょうか。