同一労働同一賃金の衝撃

同じような仕事をしていれば同等の賃金を支払うという「同一労働同一賃金」。政府の「働き方改革」においても目玉政策として掲げられて、注目を集めている。

一見当然のように聞こえるこのルールがなぜこれまで成立してこなかったのか?そしてなぜ今、導入が進められようとしているのか?「同一労働同一賃金の衝撃(著・山田久)」を読み、注目すべき内容を紹介させて頂く。

日本と欧米の違い

日本と欧米における、企業と従業員の関係性、雇用契約、人事賃金制度を比較すると以下のように整理できる。

<日本型>
・企業と従業員との関係を”共同体とそのメンバーの関係”のようにとらえ、長期継続的な関係が続くことを基本に考える「就社型」
・雇用契約はあくまでその会社の一員になるという取り決めで具体的な職務内容は企業に一任する「無限定型」
・まず人を採用して後で仕事を充てるため、人事賃金制度は「人基準」

<欧米型>
・企業はあくまで事業を遂行するための機能的組織。従業員は特定の職業や職務を決めて参画する「就職型」
・職務や職種を限定して雇用契約を結ぶ「限定型」
・まず仕事を決めてから人を採用・配置するため、人事賃金制度は「仕事基準」

「同一労働同一賃金」は、仕事を基準とて賃金を決める欧米型の雇用契約を前提としたルールであり、人を基準とする日本型の雇用契約や賃金制度にそのまま当てはめるには無理がある。



戦後日本の人事制度の変遷の中での「同一労働同一賃金」

日本の雇用慣行は時代とともに変化してきたが、第2次世界対戦後は「職能資格制度・職能給」が普及していった。
その最大の特徴は「賃金」と「仕事」を分離したところにあった。個々の従業員は「職務遂行能力(仕事一般をこなす潜在能力といった意味合い程度)」の評価に基づく資格(等級)によって、実際に就いている仕事とは無関係に賃金が決まるのである。また、実際には年功的な運用がなされていった。そのため、長く勤務すれば給与が上がることにつながって「長期継続雇用」が定着していった。
これが、俗にいう「終身雇用・年功賃金」の実態である。日本が右肩上がりの経済成長を維持でき、かつ人口構成が比較的若かった時代においては有効な制度であったといえる。

しかし、1990年代のバブル崩壊と失われた10年の時代に状況が変わっていった。
経済の急激な悪化に加え、徐々に進展していた高齢化が企業の人件費負担を重くしていった。雇用調整が難しい日本では、新卒採用の抑制で人件費を抑制するとともに賃金コストが安く雇用調整がしやすい非正規労働者の比率を上げていった。その結果、正社員と同じ仕事を行っていても低賃金・期間雇用という非正規労働者が増えていったことが社会問題になってきた。

こうした正規と不正規の間における不公平問題と同時に、デフレ脱却のために賃上げ実現を目指すアベノミクスが後押しして「同一労働同一賃金」の導入が求められるようになってきたという背景がある。

編集後記

日本の人事賃金制度が、社会保障(年金・健康保険)と同じく「人口動態の変化(高齢化・少子化・人口減少)」と「高度経済成長の終焉」によって、制度設計の前提条件が成り立たなくなってしまったことが問題の根本原因であるということがわかった。

今後は人口動態の問題が更に進むことや、新たな変化(AI・ロボットの普及等)が進むを考えると、雇用制度は我々が考えるよりも大きく変わっていくことになるだろう。