ノマド(Nomad)というのは英語の”遊牧民”から来ている言葉ですが、ノマドライフとは”現代の遊牧民”として、旅をしながら、またはカフェなどの場所を移動しながら仕事をする、「Digital Nomad (デジタルノマド)」「Hyper Nomad (ハイパーノマド)」といった生き方を指しています。
日本では本田直之氏や高城剛氏といった人達が先駆者として有名です。
目次
ノマドライフは覚悟と実力が問われる生き方
会社に従事はしているけれどもオフィスが無く色々な場所を転々としながら仕事をする人、会社に従事していてオフィスも机も会社にあるけれども自由な場所で仕事をする人、フリーランスで働いているため色々な場所で仕事をしている人など、”テレワーク”の派生のような様々な形態の人が含まれていますが、ほとんどの場合フリーランスとして働いている人達のことを想像する人が多いでしょう。
ノマドで働くことは、会社に縛られなかったり煩い上司もいなかったり、自分の時間を自由に使えたりと精神衛生上いいことが多い、自分は自由に生きたいと思っている人にとってはとても魅力的に映るかもしれません。
実際に自由に生きたいと思ってノマドワーカーとしてフリーランスで働く人も増えましたが、実際には会社員として働くよりも、より多くの覚悟が必要となる業種形態といえます。
ノマドワーカーとして必要なことは?
ノマドとして働くのであれば、上述したように世間に流されない、自分で自分をしっかりと管理できる、問題が起きたらすべて自分で解決することが出来るという心構えが必要です。
ノマドとして働いている人はほとんど自営業となるため、会社勤めであればやらなくても良かった雑務を自分で行うか、誰かに頼まなければなりません。
例えば、事務作業、経理の仕事、自分自身を売るための営業、インターネットやセキュリティ関係などです。特にインターネット環境やセキュリティ関係をしっかりと自分で管理できなければ、ノマドとして働くことは難しいでしょう。
カフェでお手洗いに行く際や少し席を離れる場合、フリーWi-Fiを使用する場合などもどこで情報漏洩があるか分かりませんので、注意が必要です。
その他にも、自分で仕事の調整を行ったり、仕事を得たりといった作業も必要となりますので、コミュニケーション能力も求められるといえるでしょう。
ノマドの先にあるモバイルボヘミアンという生き方
2017年5月、ノマドの先駆者である本田直之氏と四角大輔氏の共著「モバイルボヘミアン〜旅するように働き、生きるには〜」が発刊されました。
デュアルライフ、ノマドライフよりも更に高い次元の圧倒的な自由を持つ「モバイルボヘミアン」という生き方・働き方を紹介しています。
「モバイルボヘミアン」という生き方について、本書の冒頭でこう説明されています。
モバイルボヘミアンとは、仕事のために生きるのではなく、自分の好きなことをライフスタイルの中心に据えながら、旅するように働き、暮らす、自由な生き方のこと。
「自分らしくいられる時間をできるかぎり長く持つための方法」であり、「仕事、表現、生活のクオリティを極限まで引き上げるための考え方」とも言える。
ライフスタイル重視を突き詰めていった結果、自分の好きなことがそのまま仕事につながるという好循環に入った(本書の中で、”得意なことや好きなこと、ライフスタイルそのものをコンテンツにして仕事をする”と表現されています)、というような前向きでクリエイティブなステージのことを指しています。
また、本書の中でも述べられていますが、ノマドという言葉が流行すると共に、働く場所がオフィスに縛られずにカフェ等でモバイルPCを使って働いていることを意味しているかのように矮小化されてしまった感じもあるので、概念を再定義すると同時に改めて本質を周知するためにも新しい言葉を作ったのではないかとも感じます。
最大の制約は「どうやって稼ぐか?」
モバイルボヘミアンとしての生き方の実現ポイントは、”生き方を縛るあらゆる制約からの解放”と表現されており、主に「場所」「時間」「会社・収入源」の制約から解放されることの大切さを説いています。
1.場所: iphoneの登場によって、オフィスにいなくても仕事ができるようになった。
2.時間: 「9時から17時まで」といった塊りの時間で働くといった常識が変わる。
今のぼくたちは自分がやっていることが仕事なのか遊びなのか、はたまた休んでいるのかわからないし、「ワーク・ライフ・バランス」なんて言葉を気にもしていない状態だ。間違いなくぼくたちは今、だれにも、なんにも縛られず、すべての時間を「自分の時間」と捉えて生きることができている。
3.会社・収入源: 働く人たちの多くが、目の前の「忙しすぎる生活」に不満や違和感を抱きながらもそこから抜け出せない、そのもっとも本質的な原因は、「収入源」を1つに依存していることにある。
今、日本でも副業は話題のキーワードだが、安部内閣も「正社員の副業を容認」というスタンスになった。この流れがより進めば、副業は、単純に小遣いを稼ぐような意味での「副」ではなく、複数の「複」業になっていくだろう。
ITやLCCの発展によって、「いつ」「どこで」働くかについては物理的な制約は克服可能に見えますが、現実には「会社に依存せずにどうやって稼ぐか」という制約が最大の難関になるではないでしょうか。
モバイルボヘミアンになるための手引き
「step3 会社員からモバイルボヘミアンになるには」の章では、四角大輔氏による、モバイルボヘミアンになるための戦略・戦術的な手引きが詳述されています。
非常に実践的で現実的な内容でした。多くの人がこれを理解・共感すると思いますが、これを実践できる人は限られるとも思いました。
山登り(トレッキング)を愛する筆者ならではの、ミニマリスト的な発想が如実に表れています。
一般的な人にはストイックすぎる印象をうけるかもしれませんが、世界中を庭のように飛び回る生活を送る人にとっては、荷物を最小限に留めることに常に腐心している登山家の考え方はとても相性が良いものなのかもしれません。
内容としては、主に「仕事」と「お金」の2つの視点から書かれています。具体例を交えて平易に説明してくれているため、とても分かりやすいと思います。
「仕事」に関して:
就職して「ベーシックスキル」を身につけた後、リスクをとって実績を生み出す「専門スキル」を身につけること。その後はパーソナルブランドを確立するためのマーケティングやブランディングの活用方法について説明してくれています。
「お金」に関して:
- 【支出面】では「ミニマム・ライフコスト」を把握することで、お金の奴隷になることを回避し、不要なことを最小化し、大切なことを最大化することができると説いています。
- 【収入面】では「ベーシック・インカム(最低限の所得保障)」を確保するための方法として、”複数の小口収入を得ること”と”お金の代わりに物を対価として受け取るスキル交換”について教えてくれています。
まとめ
筆者の2人が、現状に満足することなく弛まぬ努力を続けて更に成長している様子が伝わってきます。
一方で、本文中にも度々述べられていますが、
それは本田さんや四角さんだからできることだという意見が多く寄せられますがそうではないのです。我々もここまでくるには相当な実験と試行錯誤を長時間に渡って繰り返してきたので特別なことではありません。貴方にもできます。
とありますが、確かにこの生き方は簡単なことではないと思います。
しかし、ITやLCCの発展によって、時間の経過とともにこうした生き方の難易度は少しづつ下がっていくこともまた確かに思えます。
近年では、多拠点居住やワーケーションを気軽にトライできるサービスも出てきてますので、コロナ禍で人の移動が制限される状況が続いていますが、将来的にはどんどん場所の制約を受けない社会へと変わって行くでしょう。