2000年代にアメリカで始まった教育モデルです。国を挙げてSTEM人材の育成に取り組んできたアメリカはテクノロジー分野でのイノベーションが活発となったおかげで経済も好調です。
日本でも義務教育にプログラミング教育が導入されるなど、遅ればせながらSTEM教育に乗り出していますが、このSTEM教育についての中身と能力を磨く方法について解説します。
目次
STEM教育とは?
STEM(ステム)とは、Sience(科学)の「S」、Technology(技術)の「T」、Engineering(工学)の「E」、mathematics(数学)の「M」を並べた造語です。
STEM分野に精通した市民を継続的に育成することは科学技術開発の競争力の向上に資するとの観点から、教育政策や学校カリキュラムを論じるときに言及されます。
オバマ大統領はSTEM教育を政策課題にし、コミュティ・ガレッジ(高校卒業後)で教育し、2017年にはSTEMの分野で学位を持つ人材を100万人増やすことを目指してきました。
また、アメリカの教育界でSTEMは常識になっていますが、これにArt(芸術)の「A」を加えた「STEAM」言葉も生まれています。簡単にいうと、「文系(経済・経営など)を勉強するよりも、理数系とデザインを学びなさい」ということになります。
本田直之氏も「モバイルボヘミアン」の中で、以下のように述べています。
ぼくが今20代だったとして、なにかを学ぶなら、確実に言えることは、「ビジネス」ではなく「クリエイティブ」と「テクノロジー」を学ぶだろうということ。
STEMを学ばないとAIやロボットに「使われる側」になる
日本マイクロソフト社の社長を務めた成毛眞氏の著書「AI時代の人生戦略」から、来たるべきAI時代に生き残るためのキャリア戦略を紹介します。
今ある仕事が”ない世界”がやってくる
「まだ人工知能には負けないだろう」とされていた囲碁でトップ棋士が敗れました。専門家が「人類が敗れるのは10年後だろう」と予測してから半年もたたないうちに。
「2011年度にアメリカの小学校に入学した子どもたちの65%は、大学卒業時に今は存在していない職業に就くだろう」
【米デューク大の研究者キャシー・デビッドソン氏】
また、イギリスのマイケル・オズボーン准教授は、2013年から10年~20年の間に、アメリカの層雇用の約47%の仕事が機械に代替されると予想し、野村総合研究所の予測では、10~20年後、日本に今ある仕事の約49%がAIやロボットなどに代替されるという試算を発表しました。以前、当ブログでも詳述しています。
AIが人間の能力を超える「シンギュラリティー」の時代も、予想以上に早く到来するかもしれません。そうした状況は今後10年、いや5年くらいで劇的に変化する可能性が高まっています。
日本の理数系レベルは大学入試制度にかかっている!?
文部科学省大臣補佐官の鈴木寛さんとの対談では、STEM教育を強化するために、高校野球のシステムを応用した「科学の甲子園」をはじめとして、10年後には高校生の科学部人口を17万人にするという目標を掲げている話を聞いています。
日本では1学年の人口100万人のうち、50%の50万人が大学に進学しますが、入試試験をうけるのは約33万人です。そして、そのうち、11万人が早稲田、明治、近畿大学を受けます。受験生の3人に1人という割合です。
大学側が受験料収入を稼ぐために、受験者数を多くしたい。そのために理数系の敬遠されがちな受験科目を免除します。そうすると、受験生は数学や理数系の科目の勉強を止めてしまってますます苦手意識が強くなってしまうという悪循環に入ってしまっているということを鈴木氏は指摘しています。
理数系が得意になるための近道とは
筆者は理数系を遠ざけたまま人生を過ごすこともできなくはないが、その逃げ切りが許されるのはせいぜい50代よりも上の世代だろうと指摘しています。
そこで、若い世代が科学を学び直すための手段として、読書に加えてテレビでも十分な情報を得られるとしています。
サイエンス系おすすめ番組ベスト3として、「サイエンスZERO」「コズミックフロント☆NEXT」「モーガン・フリーマン時空を越えて」を紹介しています。
こうした番組を録画しておいて、1.3倍速で視聴したり、BGV(バックグラウンドビデオ。BGMのような感じで)として流しておいても十分と言っています。
また、投資家目線で専門誌やビジネス誌、なかでも特集のある”紙媒体”に目を通すことでかなりの情報を得られるとしています。
SF小説を読んで想像力と創造力を養おう
筆者は、STEMの知識を活かすためには「想像(イマジネーション)」と「創造(クリエイティビティ)」の2つの力が欠かせないとして、フェイスブックのマーク・ザッカ―バーグやテスラ・モーターズのイーロン・マスク、アップルの故スティーブ・ジョブズなど先進的な起業家が発想を得た「SF小説」をプラスして、これらを学んでおくことの意義、具体的に何を読めばよいのかまで指南しています。
6章では26冊の著書を、専門的な物から、途方もなくバカバカしいSFコメディまで、幅広く紹介していて、新しい感性を磨けそうです。
そして、終章では、ソニーの「プレイステーションVR」を紹介しつつ、このVRを早く体感した人と、そうでない人とでは、ほんの数年先に格差が生まれかねない、大げさにいうと人生の分かれ道「分水嶺」かもしれないとまで言っています。
先端技術であるVRを、たかがゲームと侮っていないで、真っ先に体感するようでなければビジネスパーソンとして生き残っていけないと言っています。
ゲームや遊びは悪で、勉強は善、それが世間の常識のようだが、ゲームに触れなければ、テクノロジーの進化や素晴らしさは実感出来ない、STEMは、ますます生活に入り込んでいて、イノベーションのきっかけになる、と締めています。
終わりに|STEM教育とは?
STEMは人口知能(AI)社会に適応した国際競争力を持った人材を多く生み出すためにアメリカで生まれた教育の概念です。AIや新たなテクノロジーを学ぶ上で必要な論理的思考力・問題解決能力といった能力を育てるという狙いもあります。